これだけは知っておきたい 管理会計とは


“経営分析”というとイマイチに何からやればいいかわからない、という方が多いのではないでしょうか。自社の利益があまり上がっていない、売上に対して費用が多くかかり過ぎている気がするがどうしたら良いのか分からない。こうした悩みを抱える企業は、そもそもなにが解くべき課題なのかを正確に把握できていないケースが多いです。
管理会計は”経営分析”を行う上で必須のツールであり、企業の課題を“見える化”します。
管自社の課題を正確に理解できれば、”なにをすればよいのか”は自ずと見えてきます。
管本項ではそんな企業経営に必須の”管理会計”とはなにか、をご説明します。

管理会計とは?

管理会計とは、企業が行う様々な経営判断を評価するために必要な情報の中で、特に金額で表せられる情報を提供することを目的とする会計です。
また現状の企業の状態を正確に把握し、原価削減等により適切な経営管理を行うためにも使われます。
管理会計は会計学上、ミクロ会計の一種、その中でも企業会計の一種と定義されます。(図1)
営利活動を行う企業を対象とするのが企業会計ですが、その中で分類される財務会計と管理会計は似ているようで全く異なるものです。

図1:管理会計の位置付け

財務会計との違い

同じ企業会計として区分される財務会計との違いを知ることは、管理会計をより理解するために重要です。
財務会計は企業の経営状態を外部の利害関係者へ開示するために行うものであるのに対し、管理会計は、経営者等が企業の内部での経営判断のために行われるものと言う違いがあります。 よく上場企業が開示し我々も目にする機会が多い有価証券報告書等の決算書の中で出てくる、”貸借対照表”、”損益計算書”、”キャッシュフロー計算書”等は、財務会計の活動の一環として作成されるものです。
一方で管理会計の活動として行う具体的な作業としては、”原価計算”、”損益分岐点分析”、”経営分析”、”予算管理”等があります。
財務会計に比べあまり馴染みがないかもしれませんが、これらは企業が経営判断を行う上で必ず必要になる情報であり、企業にとってなくてはならない経営指標と言えます。



図2:財務会計との違い


管理会計導入のメリット・デメリット



メリット

管理会計を導入する最大のメリットは、”経営の見える化”です。各部門が企業に対してどれくらい貢献しているのか、販売している製品/サービスが生み出す売り上げは、その売り上げをあげるためにかかる原価を上回っているか、などの状態を数値で表すことで企業の経営状況を正確に把握することができ、経営課題の特定が可能になります。経営改善を実施する上では課題の正確な特定が重要なことは言うまでもありません。

また管理会計を導入することは経営層だけでなく管理職や現場で働く社員にとっても重要で、プロジェクトチームの予算計画、工場内での原価管理等、状況の正確な把握により現場での日々の改善も期待できます。


デメリット

一方で管理会計の導入にはデメリットも存在します。それは管理会計を導入することに伴う運用の混乱です。1現場や1プロジェクト内でも導入できる管理会計ですが、やはり企業全体の経営分析/経営改善を行う際は、全社的な管理会計の導入が必要になってきます。そのためには、管理会計システムを導入したり、社内の会計ルールを整備したり等手間と費用が発生してきます。また導入後も、管理会計を継続的に実施するための維持コストもかかってきます。

導入とその後の運用にかかる手間とコストだけでなく、管理会計を正確に理解し運用を整備、ハンドリングできるだけの人材も必要です。導入を初めて検討する企業にとってはこのようなハードルが存在し、なかなか導入に踏み切れないのが現状かと思います。

管理会計導入のコツ



上記のように管理会計を全社的に導入するとなるとそれなりのハードルが存在します。そのハードルを越えるためのコツをここでは大きく3つご紹介します。

十分な導入計画を立てる
管理会計を導入する際には、導入方針の策定、導入スコープ、展開スケジュール、導入体制構築等、事前の計画が重要です。無計画で導入すると管理会計の効果が薄まるばかりか、導入されたことによって発生する業務負荷が大きくなり、むしろ経営状態が悪化してしまうケースさえあり得ます。 管理会計導入のメリットを最大限生かすよう、事前に綿密な計画を策定し、関係者をきちんと巻き込みながら進めるべきです。

人材を育成する
管理会計の導入時はもちろん、導入後もきちんと管理会計の知識を持つ人材の確保は管理会計を用いた継続的な経営改善に必須です。また一部の社員のみ管理会計に詳しければ良い、と言う話ではなく、管理会計を用いた継続的/恒久的な経営改善を実現には全社員が管理会計とは、またその重要性を理解する必要があります。 そのためには外部のセミナーへの参加、参考図書の推奨等、社員のスキル向上に積極的に取り組むべきです。

外部のコンサルタントを導入する
綿密な導入計画、人材の育成の他にも管理会計を導入する際は、様々な準備をする必要があります。その中でも特に重要になるのは管理会計システムの導入です。
管理会計システムは日々の管理会計の実施を支援するものではあるが、どの管理会計システムを導入すべきか、また導入後もどのように活用していくべきか、分からないこと企業が多いのではと思います。 わからないだけでなく、実際に導入を推進できるリソースとナレッジがない企業は、無理に自社のみで頑張るのではなく、その道のプロである外部のコンサルタントを導入することをお勧めします。外部のコンサルタントと一緒に管理会計を導入することで、運用後の混乱の最小化、社員の育成が可能になり、よりスムーズな導入が実現できます。

最後に

本項では”これだけは知っておきたい”管理会計の概略をご説明しました。 管理会計は企業経営だけでなく日々の業務の改善に役立つ万能ツールです。 次回は”管理会計の実践”ということで、具体的にどのように管理会計を使って経営分析、改善して行くか、を具体例とともにご説明していきたいと思います。お楽しみに!

執筆者紹介
K.I コンサルティング事業部

コンサルティングファーム(Big4)を経てJGコーポレーションにジョイン。システム導入にかかる企画構想から実行まで幅広いプロセスの支援、およびリードを得意とする。英語を活かした海外パートナーとの円滑な協業支援も可能