国内主要自動車メーカー6社のCASEに関する取り組み

公開日:2022/06/09

4. ホンダのCASEへの取り組み


4.1 概要

ホンダの将来の技術開発について発表する「Honda Meeting 2019」において語られたホンダ流のCASEとは、コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化に加え、サービスとエネルギーを加えた「HONDA・CASE」であるとのことです。
HONDA・CASEをベースにエネルギーの社会循環を形成するという大きな構想で、足下のパーソナルカーから移動の自由の可能性を広げるシュアリングや自動運転などのモビリティサービス、そして4輪以外の移動体も連携する社会を想定し、多様なエネルギー技術を活用したスマートシティを作ることで社会に貢献することを目指しています。

4.2 コネクティッド

4.2.1コネクティッドサービス「Honda Total Care プレミアム」
Honda Total Care プレミアムは、Honda車専用通信機を含む車載通信モジュール「Honda CONNECT」を通じて、お客様のカーライフをより安心・快適にするホンダのコネクティッドサービスです。
Honda Total Care プレミアムでは、進化したHonda Total Care緊急サポートセンターがユーザーに24時間365日、より安心・安全なサービスを提供しています。また、通信を通して新しい地図に自動更新する自動地図更新サービスや、車内Wi-Fi機能など快適・便利なサービスも提供しています。スマートフォンアプリとしては、コネクティッドサービスをスマートフォンで扱う「Honda Total Care」と、操作機能を持つ「Hondaリモート操作」の2つに分かれています。

4.2.2 Google と車載向けコネクティッドサービスで協力
ホンダと Google LLC(Google)※6は、Google の車載向けコネクティッドサービスで協力し、ホンダの2022年後半に北米で発売する新型車に搭載を開始し、その後、順次グローバルに展開していく予定です。
ホンダと Google は、2015年から自動車業界全体で Androidプラットフォームの自動車への導入に向けて協力してきました。その成果として、2016年発売のAccordより「Android Auto」の搭載を開始し、スマートフォン機能をドライバー向けに最適化させることで、安全かつ快適に利用できるUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供してきました。
主な機能としては、「Google アシスタント」による音声アシスタント、「Google マップ」によるナビゲーション、「Google Play」による車載用アプリケーションが提供されます。
※6 Google LLC:https://www.google.com/

4.3 自動運転

4.3.1 日本で唯一自動運転レベル3に成功
2020年11月、ホンダは自動運転レベル3 型式指定を国土交通省から取得し、2021年3月には「自動運行装置」であるトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)を実現したHonda SENSING Eliteとそれを搭載する新型LEGENDを発表しました。
車両制御においては3次元の高精度地図や、全球測位衛星システム(GNSS)の情報を用いて、自車の位置や道路状況を把握し、多数の外界認識用センサーで周囲360°を検知しながら、車内のモニタリングカメラでドライバーの状態を見守ります。こうしてさまざまな情報をもとにメインECUが認知・予測・判断を適切に行い、アクセル、ブレーキ、ステアリングを高度に制御して上質でスムーズな運転操作を支援します。
システム開発においては安全性・信頼性を最も重視し、約1,000万通りのシミュレーションを重ね、同時にテスト車両を用いて実証実験を実施しました。また、いずれかのデバイスに不具合が生じた場合の安全性・信頼性にも配慮し、冗長設計が取り入れられています。

4.3.2 世界でも実証実験を展開
ホンダは、自動運転システムのグローバル展開に向けて、日本以外でも実証実験を展開しています。中国では、中国政府が定める自動運転技術推進企業である百度(バイドゥ)※7と中国独自の地図及びその応用技術の共同研究を実施しています。また、AI技術に関してSenseTime Group Limited(sensetime社)※8との共同開発を推進しています。欧州では、自動運転に対する受容性検証を目的とするL3Pilotというコンソーシアムに参画し、実証実験を行っています。さらに北米では先端研究の拠点であるHRI(Honda Research Institute)USを主体に、AI技術の自動運転への活用について先進的研究を実施しています。高速道自動運転技術についても、実証実験の準備を進めています。
※7 百度:https://www.baidu.com/
※8 SenseTime Group Limited:https://www.sensetime.com/en

4.4 シェアリング

4.4.1 中古車サブスクリプションサービス「Honda Monthly Owner」
ホンダは車のサブスクリプションサービスとして、中古車サブスクリプションサービス「Honda Monthly Owner」、新車サブスクリプションサービス「楽らくまるごとプラン(略称・楽まる)」を展開しています。
「Honda Monthly Owner」は2021年1月に開始したサービスで、税金やメンテナンス費用、自動車保険料などがワンパックで、最短1カ月から最長11カ月まで、定額でホンダの中古車を利用できるサブスクリプションサービスです。利用用途は、クルマを保有する生活の体験や、買い替え検討を目的とした「試乗」が多く、そのほか、「通勤・送迎」、ウインタースポーツなど季節性のある「趣味」といった、多様な期間限定の用途が多いとのこと。また、コロナ禍における移動ニーズの高まりを受け、公共交通機関やカーシェアリングサービスに代わる移動手段として利用されることもあるそうです。

4.4.2 新車サブスクリプションサービス「楽らくまるごとプラン」
「楽らくまるごとプラン(略称・楽まる)」は、2021年5月に開始したサービスで、ユーザーの好きな車種(新車)を月額定額で使用可能な金融商品です。車両代に加え、契約期間中のメンテナンス、延長保証、税金、自動車保険(任意加入)が全て月額料金に含まれる商品となっています。契約期間は、3年・5年・7年より選択することができ、契約期間中の中途解約や買取も可能です。

4.5 電動化

4.5.1 ホンダのEVへの取り組み方針
2022年4月、ホンダは「Honda四輪電動ビジネス説明会」と題した記者説明会を行いました。2030年にEVの年間生産台数の目標を200万台以上としています。ホンダの年間販売台数が450万~500万台であると考えると、200万台はその40~45%となります。
また、同発表では今後10年の資源投資として、電動化・ソフトウエア領域の研究開発費に約3.5兆円もの予算を投じる予定とのことです。

4.5.2 ソニーとホンダのEV開発
2022年3月、ソニーとホンダは両社で合弁会社を設立し、新会社を通じEVを共同開発・販売し、モビリティ向けサービスの提供と併せて事業化していく意向を確認した基本合意書を締結しました。
ホンダが長年培ってきたモビリティの開発力、車体製造の技術やアフターサービス運営の実績と、ソニーが保有するイメージング・センシング、通信、ネットワーク、各種エンタテインメント技術の開発・運営の実績を持ち寄り、利用者や環境に寄り添い進化を続ける新しい時代のモビリティとサービスの実現を目指します。
EV車両の初期モデルの販売開始は、2025年を想定しています。


5. 日産のCASEへの取り組み

5.1 概要

日産のCASE戦略は、外部資源を使う傾向が強いといえます。仏ルノー・三菱自動車とのアライアンスに加え、IT企業との連携により、CASE対応を進めています。

5.2 コネクティッド

5.2.1 コネクティッドサービス「NissanConnectサービス」「NissanConnectEV」
日産はコネクティッドサービスとして、「NissanConnect サービス」を展開しています。
コネクティッドアプリとしては「NissanConnectサービス」と、EVオーナー向けの「NissanConnectEV」の2つに分かれています。「NissanConnectサービス」は車のリモートコントロールなど車から離れたところで操作・管理が出来るアプリです。「NissanConnect EVアプリは」、EVオーナー向けのアプリで、車のリモートコントロールや充電スポット満空情報などの多彩なサービスが利用可能です。

5.3 自動運転

5.3.1 自動運転コンセプト「Pro PILOT(プロパイロット)2.0」
日産自動車は、自動運転レベル2の技術を「Pro PILOT(プロパイロット)2.0」として、一部市販車に搭載しています。高速道路でのハンズオフ運転を可能にする機能で、2019年9月から搭載がスタートしています。
車両のカメラやレーダー、スキャナーのほか、HDマップ(3D高精度地図データ)などを活用して車両の周囲の情報と自車の正確な位置を把握することにより、ハンズオフでの滑らかな運転が可能になるとのことです。

5.3.2 ウェイモとの自動運転技術の提携
2019年6月、ルノー、日産とウェイモ(Waymo)※9は無人自動運転を用いたモビリティサービスの検討に関する独占契約を締結したと発表しました。3社は各市場の分析や商業・法規面の課題などを共同で調査し、検討を進めていくとのことです。まずルノーと日産自動車それぞれのホームマーケットであるフランスと日本でその可能性について検討を実施し、その後、中国を除く他の市場への検討に移る予定です
※9 ウェイモ:https://waymo.com

5.4 シェアリング

5.4.1 新車サブスクリプションサービス「NISSAN ClickMobi」
「NISSAN ClickMobi」は、インターネット上で新車を注文し、車両本体価格、自賠責保険、また点検や車検、税金などを、まとめて月々定額で支払うことができるクルマの購入・利用サービスです。さらに、自宅にクルマを納車するサービスや、「NISSAN e-シェアモビ」と連動したオンラインの試乗予約なども組み合わせることも可能です。2020年3月より北海道札幌地区で始動し、全国展開されました。

5.4.2 EVカーシェア「NISSAN e-シェアモビ」
2018年1月、日産は自社の経営方針である「日産インテリジェント・モビリティ」の取り組みを特徴としたカーシェアリングサービス、「NISSAN e-シェアモビ」を開始しました。
「NISSAN e-シェアモビ」は、日産のEVとe-POWER※10のみを使ったカーシェアリングサービスで、電気自動車ならではのドライビングの楽しさと快適さを提供する電動化技術と、自動運転技術や自動駐車機能などの知能化技術を体感できるカーシェアリングサービスです。
また、免許証がそのまま会員カードに、15分単位から利用できる、利用時の距離料金が追加発生しないことなど気軽に利用できるように工夫されています。
※10 e-POWERとは、日産が開発するハイブリッドシステムで、ガソリンエンジンは発電のみ、走行はすべて電気モーターによる電動パワートレインです。

5.4.3 オンデマンド配車サービス「Easy Ride」
日産は株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)※11とともに、無人運転車によるオンデマンド配車サービス「Easy Ride(イージーライド)」の開発や実証実験に取り組んでいます。「Easy Ride」は、「もっと自由な移動を」をコンセプトに誰でも好きな場所から行きたい場所へ自由に移動できるサービスとして開発中の取り組みで、スマートフォンアプリから自動運転車を呼び出し、乗り込んでからは車内にある「GO」ボタンを押すだけで目的へと向かうことができます。
2018年2月より横浜みなとみらい地区で取り組んできた「Easy Ride」は、2021年9月より第3回目となる実証実験が行われました。
※11 株式会社ディー・エヌ・エー:https://dena.com/jp/

5.5 電動化

5.5.1 日産のEVの方針
2021年11月、日産は電気自動車を中心とした電動化を戦略の中核とする長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』を発表しました。2030年度までに電気自動車15車種を含む23車種の新型電動車を投入し、グローバルの電動車のモデルミックスを50%以上へ拡大する目標です。そのために、今後5年間で約2兆円を投資し、電動化を加速するとのことです。

5.5.2 仏ルノー・三菱自動車とのアライアンス
2021年1月に開かれたオンライン記者会見にて、日仏アライアンス3社はアライアンスロードマップを発表しました。2030年に向けて、アライアンスは電気自動車(EV)とコネクテッド・モビリティに注力し、2026年までにプラットフォームの共用化率を80%まで向上させることを目指します。また、5年間で230億ユーロ(約3兆円)の投資を計画しているとのことです。